2018年9月6日深夜3時7分に北海道胆振東部地震が発生。
北海道の誰もが経験したことのない大地震。
安平町も被害を受け、この震災による被害額は約177億円。住宅の9割以上が損壊しました。また、北海道は日本初の「ブラックアウト(全域で電気が使えない状態)」を経験することにもなりました。未曾有の大災害で役場も町も大混乱。


しかし、震災から2日で「安平町災害ボランティアセンター」が立ち上がり、避難所運営のサポートや住宅清掃、震災ゴミ回収などの活動を行なっていくことになりました。
ありがたいことにボランティアは全国から約2600人の登録があり、現場作業には延べ4000人以上の参加がありました。
そのおかげで、3日間で町内全ての震災ゴミを撤去する「安平クリーンプロジェクト」や、町内全世帯の聞き取りに伺う「全戸訪問ニーズ調査」など、大規模な支援プロジェクトを実施することができました。安平町の災害復旧はハイペースに進めることができ、2か月程度で少し落ち着きを見せたかと思います。


しかし、まちの活力は時間が経つにつれ、徐々に失われていっていました。崩れた商店は空き地になり、住む家を失った人はまちから離れていきました。
町内の飲食店オーナーからは「今回の災害によって、自粛ムードが出ていて、夜のまちで飲み歩く人がいなくなった。店を開けたいがお客さんもいないので、曜日を限定してでしか開けられない」などの声も聞かれました。
災害ボランティアセンターは、社会福祉協議会の組織として住民を支える活動が中心です。しかし、失われた活力を取り戻すには福祉に加え、地域をつくり、まちが元気になる活動も必要です。
そこで「町の復旧作業」を担う災害ボランティアセンターとは別に、「町の復興を推進すること」を目的とした安平町復興ボランティアセンター(通称:復興ボラセン)が設立されました。

復興ボラセンでは様々な活動を行なってきました。
2018年11月〜2019年3月には、震災で学ぶ場所を無くした中学生に向け、地元有志団体が立ち上げた無償塾の運営を手伝いました。
地元飲食店と協力し1000円でビール1杯とおつまみを食べて飲み歩く「ハシゴ酒シリーズ」は、2018年〜2019年の一年で計6回開催されており、毎回100人ほどの方が町内外から参加してくれます。
2019年4月からは、あびら観光協会と協働して道の駅を活用した観光イベントの企画・運営も行なっています。



そして今回、次の取り組みとして「復興の未来をつくる拠点」を作りたいと考え、この「ENTRANCE(エントランス)」を立ち上げました。
ここは「復興へ向けた未来の安平町を語る場、つくる場」にすることを目指しています。

復興という点で考えると、物の復興はお金をかければ元に戻ります。しかし、心の復興は、色んな想いを持った人が集まり、その想いを語り、そこから未来へ向けて前向きな空気や支え合う気持ち、自立していくような文化を作っていくことでゆっくりと醸成されるのだと思います。
そのためにはまず「多様性が認められ、居ることが許され、動くことを受け容れられる場」が必要です。そして一人一人の気持ちが温まり、十分に力がみなぎった時、復興の未来をつくるチャレンジが生まれていくのだと考えています。
今回の震災によって、町からなくなったお店がいくつもあります。だからこそ、町の中心に人々の語らいが生まれ、新しい何かが生まれる拠点を作りたいと考えました。
拠点の場所を考えた時に浮かんだのは、駅前の最初の交差点にある空き店舗でした。

地域の方々もここに明かりが灯ることを望んでいた場所です。オーナーに想いを伝えて交渉したところ、快く貸していただけることになりました。
駅のすぐ目の前にあることと、またここが「復興への未来の入り口」となり、かつ「一人一人の未来への入り口」にしていきたいという想いから、この場所を「ENTRANCE(エントランス)と皆で名付けました。
震災前から過疎化という大きな課題に直面していた安平町。だからこそ、私たち復興ボランティアセンターがきっかけをつくり、地域の場づくりを通して、住民と一緒に復興へ向けた一歩をつくりだしていきたいと考えています。
ENTRANCEの改修資金については、住民や町を支える活動のために寄せられた寄付金は充てず、クラウドファンディングに挑戦しました。

クラウドファンディング_被災した北海道安平町に、
未来への入り口となる町の拠点を!
https://readyfor.jp/projects/abira
2019年7月16日から8月30日までの約45日間の挑戦でしたが、全国各地から温かいご支援とメッセージをいただき、なんと2,525,000円もの金額を集めることができました。本当にありがとうございました。
その後はオープンに向け、本格的な改修作業が開始。自分たちで改修が行なえるところは支援者の方々やボランティアさん方と一緒に力を合わせて自分たちで改修し、、



2019年11月16日。
ついに。「ENTRANCE」をオープンさせることができました。

復興ボラセンの活動を応援してくれている方がこんなにもいること、ENTRANCEへの期待をものすごく感じることができました。
ここまで支えてくださった方々、ご支援いただいた方々には本当に感謝しかありません。この場をお借りしてお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

そして、大変ありがたいことに、ENTRANCEはオープンして3ヶ月ほどで利用者数がなんと1,400人を超え、今でも毎日約20名ほどの地域の方々に足を運んでいただいております。
イベントも定期的に開催し、地域の方が気軽に参加しやすい工夫なども行なっています。
これからも地域に根差し、地域に愛され、町の未来への入り口となれるコミュニティスペースを目指して、ENTRANCEを運営してまいります。




最後になりましたが、災害で大変な思いをしているのは安平町だけではありません。それぞれのまちや地域で災害と向き合い、復興に向けて一歩ずつ歩む人達がいます。一方、その一歩を踏み出したくても踏み出せない人もいます。
このENTRANCEを通して、その一歩を歩む人、踏み出そうとしている人と一緒に「ともに歩む」関係を築いていけたらと思っています。
安平町、本当に良いまちです。ぜひ、一度遊びに来てください。
ENTRANCEで待っています!!
